なんとなく軸がブレている気がして踊りづらい…
カラダがだるくて可動域が悪い気がする…
同じ振り付けでも、日によって動きが全然違う…
そんな風に感じたことはありませんか?
その原因、もしかしたら“姿勢”かもしれません。
身体の感覚の違いを生む原因のひとつが、「姿勢」です。
姿勢は、静止しているときの形、というだけでなく「動きの土台」になります。
また、動作が始まる前には必ず、動くための準備姿勢が必要です。
これを予備動作と言います。
この「動きの土台」となる予備動作で、良い姿勢ができるかできないかで、スピード・ボディーコントロール・表現力などが変わってくることがあります。
この記事では、ダンスや様々なスポーツの経験、そして鍼灸師・身体の専門家としての視点から、「なぜ姿勢が変わると、パフォーマンスが変わるのか?」「良い姿勢とは?」について、わかりやすく解説します。
姿勢が変わると、なぜ動きやすくなるのか?
私たちの体は、骨・筋肉・関節の連携によって動いており、骨や関節の角度・位置などは基本的に決まっています。
骨や関節の位置関係のことを「アライメント」と言います。
アライメントが整っている状態で動くと、骨・筋肉・関節が効率よく働くことができます。
その結果、
①無駄な力が抜ける
②軸が取りやすくなり、安定感が増す
③踏ん張りやすくなり、パワーの発揮がしやすくなる
というような、最小限の力で、効率よくカラダを動かすことができるのです。
反対に、良い位置ではないところで動かしたり、どこかで障害が起きると、うまく連携がいかなくなってしまい、関節の動きの悪さや痛み、体の感覚の低下などの問題が起こります。
例えば、姿勢が悪い状態で動こうとすると、
- 頭が前に出た姿勢では、重心が前に行きやすくなり、バランスが取りにくくなる
- 骨盤が後ろ(後傾)(背中が丸まる方向)に倒れていると、ジャンプの高さが出にくくなる
- 肩が前に巻き込んでいると、肩の可動域が小さくなり、腕の動きが小さく見える
といったように、体の感覚が鈍くなったり、動きにくさや踊りにくさが出てきてしまいます。
また、悪い姿勢のデメリットは、パフォーマンスに影響を与えるだけでなく、
- 肥満(体幹の筋肉がうまく使えない)
- 便秘、下痢(腸内環境の乱れ)
- 血行不良によるむくみ、冷え
- 老けて見える
- 頭痛、肩こり、めまい、耳鳴り、不眠、イライラ、腰痛、うつ、倦怠感などの不定愁訴
- 痩せにくい体になる
などの症状が起きやすくなります。
良い姿勢は、筋力バランス、競技特性、元々の骨格などによって変わってくることもあります。
ですが、基本的には、基準となる良いアライメントを目指しましょう。
姿勢チェック!あなたの姿勢は大丈夫?
まずは、良い姿勢とは何なのか、良いアライメントはどんな状態なのかについて解説します。
横から見たアライメントと、後ろから見たアライメントの評価は、以下の通りです。
(医療系国家資格の教科書によって、部位の表記が若干違います)

矢状面
・耳垂(じすい):耳たぶ
・肩峰(けんぽう):肩の先端
・大転子(だいてんし):
股関節の外側の出っ張っている骨
・膝関節前部(or 膝蓋骨後方):
横から見た膝の真ん中より少し前
・外果(がいか)の前方:外くるぶしの前

前額面
・外後頭隆起(がいこうとうりゅうき):
頭の後ろのくぼみのあたり
・椎骨棘突起(ついこつきょくとっき):
背骨一つ一つの背中を触って出っ張った部分
・殿裂:おしりの割れ目のライン
・両膝関節内側の中心
・両内果の中心
では、自分の姿勢がどうなっているかを確認してみましょう。
この時に、目線が変わると姿勢も変わってしまうので、目線はまっすぐ。
スマホのカメラ等で撮影してみましょう。
この時に、上記の図で挙げた基準になる部分に、シールなどを貼ると分かりやすくておすすめです◎
横向きのチェック項目
- 頭が前に出ていないか
- 肩が内巻きになっていないか
- 骨盤が前傾・後傾していないか
- 膝が過伸展(反りすぎ)していないか
- 足裏のどこに体重がかかっているか
うしろ向きのチェック項目
- 耳たぶの高さは同じか
- 肩のどちらかが上がっていないか
- 骨盤の高さは水平か
- 足の太さ(筋肉のつき方)に左右差がないか
- アキレス腱はまっすぐか
(アキレス腱がまっすぐかどうか、というような、足のお話はまた別でお話しします。)
よくあるNG姿勢の例(横向き)

①ロードシス:
腰椎の前弯が強く、骨盤が前傾しやすい姿勢です。
ケンダルの姿勢分類の中では比較的歪みが小さいとされています。
②カイホロードシス
胸椎の後弯が強く、腰椎の前弯も強くなっている姿勢です。
骨盤が前傾しやすい特徴があります。
一般的に「猫背」と「反り腰」が合わさったような姿勢です。
③フラットバック:
脊柱のS字カーブが減少し、全体的に平坦になっている姿勢です。
特に腰椎の前弯が少なく、骨盤が後傾しやすい特徴があります。
④スウェイバック:
胸椎の後弯が強く、骨盤が後傾しやすい姿勢です。
全体的に体が後ろに傾いているように見え、股関節が前方に突き出ているように見えることがあります。
姿勢を整えるためにやるべき3つのこと
良い姿勢を保つためには、筋力や柔軟性、正しい重心線に乗るコントロールの能力がとても大切です。
簡単で、試してみやすいものを3種類挙げたので、ぜひ試してみてください。
① 骨盤と体幹の安定性を強化する
骨盤は“身体の土台”です。
ここが傾いていると、すべての動作が不安定になります。
おすすめ:
- 仰向けで両膝を立て、骨盤を前後にゆっくり動かす
- 体幹を安定させる「プランク(30秒〜)」
② 意識的に深い呼吸を心がける
呼吸が浅いと、肋骨や肩、背中周りが硬くなってしまいます。
その結果、呼吸で使われる筋肉の動きが悪くなり、呼吸が浅くなる悪循環に陥りやすくなります。
おすすめ:
- おへその下(丹田)に手を当てて、ゆっくり5秒吸って5秒吐く(仰向けでリラックスした状態がベスト)
- 肋骨の動きを感じながら行う「胸式+腹式呼吸」
③ 股関節の動きを出す
姿勢が悪いと言われる人の多くが、股関節周りが硬いです。
意識的にほぐしたり、ストレッチで動かしましょう。
おすすめ:
- 股関節周りの筋肉(前、後ろ、内、外、おしり)を、テニスボールやマッサージガンなどで緩める
- 伸脚(内もも、裏もものストレッチ)
- アキレス腱伸ばしを深く(前もも、股関節の前のストレッチ)
- 長座で前に倒す(裏もものストレッチ)
姿勢が変われば、動きも変わる
現代社会で、スマホやパソコンなどに触れる機会が増えていることもあり、来院した患者さんにベッドに座ってもらうと、年齢、性別にかかわらず、姿勢が悪い方がほとんどです。
悪い姿勢で肩や首を動かしてもらうと、全然動きません。
ですが、施術後に起き上がってベッドに座ってもらうと、見ただけでも姿勢が変わっています。
その状態で肩や首を動かしてもらうと、動きがとても良くなっています。
ダンサーへの施術の現場でも、15分ぐらいの施術で姿勢を整えただけで、可動域が広がり「踊りやすくなった」「軸が取りやすくなり、ターンがしやすくなった」という声を多くいただきます。
もちろん、完璧な姿勢を常に保つのは難しいですが、「姿勢に気づけるかどうか」「修正する意識」があるだけでも、姿勢も、動きも、確実に変わります。
まとめ
- 姿勢が悪いと、体を効率よく使えない
- アライメントを整えると、脱力しやすくなる、軸が取れる、パワーの発揮がしやすくなる
- 自分の姿勢の写真を撮って、客観的に見てみる(横から・後ろから)
- 自分の悪い姿勢に気付き、修正できる力を身につける
自身のダンス経験と、西洋医学、東洋医学、スポーツ科学などの視点から、多くのダンス・舞台関係の方々の施術を行なっています。
もちろん、ダンス関係のみではなく、会社員の方々、様々なスポーツをされている方の施術も現在行っております。
詳しくはHPをご確認ください。