ダンス経験のある現役鍼灸師が教える|バイオメカニクスから見たキレを生む「身体の使い方」講座

ダンスの練習をしていて、
「もっと動きにキレを出したいのに、身体が重い……」
「練習すると足首や腰に違和感や痛みが出てくる……」
ダンスを踊る多くの方が、一度はこうした状況に直面したことがあるのではないでしょうか?
運動神経やセンスという言葉で片付けられがちですが、実はその悩みの多くは、身体の構造(バイオメカニクス)に反した動きが原因になることが多いです。

私が大学時代に学んだスポーツバイオメカニクス(動作分析)の視点と、今までたくさんのダンサーさんを施術してきた経験、そして自分自身が踊る中で感じる感覚を元にお話します。

まず最初に、ダンスのキレは、単なる筋力の問題ではありません。
バイオメカニクスに基づいて、効率的な身体の使い方ができるようになることでダンスのキレを生むことができます。

この記事では、あなたのパフォーマンスを劇的に変え、一生踊り続けるための身体の作り方をお伝えしていきます。


1. 体幹を「固める」から「連動させる」へ

ダンス界では体幹が重要であることは、この10年ほどでもう常識になりましたね。
しかし、現場で多くのダンサーを診ていると、体幹を固めすぎて動きを制限しているケースがとても多いです。

スポーツバイオメカニクスからの視点で見ると?

そもそも、体幹の役割は「固める」のではなく、「力の伝達」です。
腹筋、背筋をガチガチに固めてしまうと、呼吸が浅くなり、胸郭(肋骨まわり)の柔軟性が低下してしまいます。
その結果、手足の動きが硬くなり、かえって軸は不安定になりやすく、速く、大きく動けなくなります。

大事なのは、インナーマッスルが適切なタイミングで効率よく使われること。
アウターの筋肉が張りすぎていたり、力みやすいと、インナーマッスルもうまく働きません。
竹のようにしなやかで、強い軸が身体の中心にある状態をイメージしましょう。


2. 股関節を「離す」が表現力の鍵を握る

バレエでのバットマンやターンアウト、HipHopなどのストリート系のジャンルでも、足のイン・アウトなど、股関節周りの悩みは、ダンスを踊っている人は、踊っている限り一生付きまとう悩みだと思います。
股関節の可動域を広げたり、コントロールして表現力を上げるために大切なのは、柔軟性だけではありません。
股関節を「離す」という概念です。

動作分析の観点からお話すると、足を動かす時に骨盤と大腿骨(太ももの骨)が一緒に動いてしまう人がいます。
この大腿骨が動く時に、一緒に大きく骨盤も動いてしまう動きを「代償動作」と呼びます。
骨盤が一緒に大きく傾くと、見た目のラインが崩れるだけでなく、腰椎(腰の骨)に強い負担がかかり、腰痛の原因になります。

多くのダンサーは、股関節の外旋に関わる「深層外旋六筋」などのインナー筋肉がうまく使えていません。
(特にバレエ出身の方は、「お尻の筋肉を使わないように」という指導を受けた方は多いと思います。)
ここを施術などで整えると、股関節の可動域が広がり、股関節が外旋しやすくなります。

↑後ろから見た骨盤・股関節周り

↓前から見た骨盤・股関節周り

さらに脳のイメージと、自分の体の感覚を一致させることがとても重要です。
「骨盤は安定させ、股関節だけを独立して回す」感覚を養いましょう。
(ピラティスはかなりおすすめです!!)


3. 「床反力」を味方につける足裏の使い方

最初にお伝えしましたが、キレの正体は、運動神経でも、センスでも、筋力でもありません。
床からの反発(床反力)を、いかに無駄なく身体に伝えられるかどうかです。

足裏には3つのアーチがあります。
・内側縦アーチ(踵から母趾球のライン)
・外側縦アーチ(踵から小趾球のライン)
・横アーチ(母趾球から小趾球のライン)
これがクッションとバネの役割を果たしています。

アーチが潰れていると、床からのエネルギーが吸収されやすくなり、ジャンプやステップのキレが失われます。
また、足裏で吸収できるはずの衝撃がダイレクトに膝や脛(すね)に伝わり、シンスプリントなどの怪我を招きます。

足裏のアーチは、まずは
①足裏や指の間などをほぐす
②矯正する(整体・インソールなど)
③指を使えるようにする(トレーニング)
これらができて初めて、足裏のアーチが生まれやすくなります。


痛みが教えてくれる身体のサイン

鍼灸師・整体師として、日々臨床に立っていると、痛みが出ている部位は「被害者」であることがほとんどだと感じています。
(痛みが出ている場所自体が悪い場合ももちろんありますが、その場合は一度整形外科の受診が必要なことも多いです)

「腰が痛いのは、股関節が動いていないから。 」
「足首を痛めるのは、体幹が使えていないから。」
など、人それぞれ骨格も、身体の使い方も、生活習慣も違うので、一概に「この痛みは、ここのせい」と言い切れる訳ではないですが、、、

こうした使いすぎの問題の裏にある、使い方の間違いを修正することが、上達への近道です。

自分の身体の癖を客観的に知り、解剖学に基づいた動きを身につける。
それだけで、あなたのダンスは格段に表現力が上がり、長く踊り続けられることができるようになります。

軸を作るために必要なことは、人それぞれ違います。
自分の本当の原因を知って、改善したい方は、ぜひご相談ください。