”ダンサーは繊細なアスリート”

ダンスに関わる全ての人へ

私自身、小さい頃から様々なスポーツを経験し、体育学部を卒業し、現在もダンスを踊っています。

大学生の頃、渋谷にあるダンススタジオに通い始めましたが、当時ダンスを始めて思ったことは、

「ダンス界に身体の知識がなさすぎる!!」

ということでした。

誤解が生まれるかもしれないので、詳しくお伝えします。

なぜ「ダンス界に身体の知識がなさすぎる!!」と思ったのか

私は5歳ごろからスポーツ界にいて、高校生まで競技をしていた身として、ウォーミングアップやクールダウン、メンテナンス、トレーニングの方法、怪我の知識などは、先生・先輩・仲間たちから教えていただきました。

大学生になり、ダンスを始めると、怪我や痛みを抱えながら踊っている人が多すぎることに気が付きました。

それが大きな怪我であったり、若干の違和感であったりと様々ですが、問題なのは、自分の体の痛みや違和感をスルーして、対処していないことです。

また、怪我を予防するために大切な、踊る前のアップと、踊った後のクールダウンが、圧倒的に足りておらず、やっていても、逆に怪我をしてしまいそうなやり方でやってしまっていることも少なくありません。

怪我や痛みを抱えていて、治療を受けていたり、自分でメンテナンスをしたり、何かしらの対処ができていればまだ良いのですが、ダンスをやっている人は、自分を追い込みがちで、痛みがあっても踊り続けてしまう人が多い印象です。

その結果、ダンスが踊れなくなるような怪我に繋がってしまうのです。

ダンサーを施術してきて思うこと

私が、ダンサーたちをずっと施術してきた中で感じているのは、

「他のスポーツと違ってダンサーはとても繊細。」ということです。

これはダンスはボディーコントロールが大切なので、身体の感覚が鋭い人が多いからです。

治療家の目線からすれば、他のスポーツは動きがだいたい決まっていて、言われればだいたい想像がつき、治療ができます。

ですが、ダンスは技やポーズに名前がついていて、それらをどういう意識でやるのか、名前はついていないけど、口で説明しにくいような、変な動きをすることが多くあります。

治療を受けにいらっしゃった患者さんたちの多くは
「他の整骨院や整体に行ったけど、あんまり理解してもらえず、なかなか良くならない or 治らなかった。」

とおっしゃっています。

なぜそういうことが起きたのかというと、その施術者がダンスの動きをあまり理解していないということと、ダンスを踊っていない一般の人を基準にしてしまっているからです。

もちろん、私の知っている治療家で、ダンス経験はないけど、しっかり治療できる方もたくさんいます。

なので、一概に全員がそう、というわけではありません。

(もし、ダンスを踊る上での悩みがあり、初めての場所で施術を受ける際は、「ダンスはわからないけど、その施術者が身体と動きをしっかり理解してくれるがどうか」ということを目安にするといいかもしれません。)

個人的に思う、ここでの”ダンサー”の定義

人それぞれ状況も違い、年齢も、ダンスを踊る頻度や、本気度は違うと思います。

ですが、まず前提として、

・仕事としてダンスを踊っている、振り付け等をしている人

・学生で、部活やサークル、ダンススタジオに通って踊っている人

・仕事として舞台に立ちたくて頑張っている人

・趣味で踊っている人

・動画を見ながら家で踊っている人

とにかく、ダンスを踊っている人は、みんなダンサーです。

あくまで個人的な見解ですが、ダンスは芸術の分野でありつつも、私は「ダンサーは繊細なアスリート」だと思っています。

治療家目線でダンスを語れば、ずっと語れると思いますが、ダンスは他のスポーツよりも動きが特殊で繊細です。

身体の使い方や、他のスポーツにはないような特殊な動き、身体への負担を考えると、トレーニングや食事、身体のケアなどは、本番のパフォーマンスを上げ、怪我を予防するためには、アスリートと同様にとても重要です。

怪我をしたダンサーに共通すること

ダンサーを施術してきて、痛みが出たり、怪我をした人を施術してきて思ったことは、

「練習をしていないと置いていかれるといった不安感や焦燥感がある」

「レッスンを受けたり練習会が楽しくて忘れてしまっていた」

「日々のリハやレッスンや本番に追われていた」

といった人が8割ぐらいだな、ということです。

ダンスの歴史を考えると、ストリートダンスは特に、武器の代わりにダンスで勝負する、というような歴史もあるので、いきなりストリートでバトルが始まります。

そのため、当然ながらアップをしません。

踊った後のクールダウンも、レンタルスタジオでの自主練習や練習会、ダンススタジオでのレッスンなどでは、各インストラクターの先生がアップをして、最後は振り付けを踊って終わり、スタジオの時間があるのですぐに出る…

という流れがあるので、クールダウンをする場所も時間もなく、ほとんどの人がそのまま帰ってしまいます。

私自身も、踊った直後はなかなか思うようにできないことも多いので、帰宅後や寝る前に、ストレッチやマッサージなどをやっています。

治療家目線で考えると、こういった歴史や習慣が、ダンサーの怪我が多い原因の一つになっているんだろうなと思います。

楽しく踊り続けられる身体をつくるために

最近では、K-Popアイドル・ダンスボーカルグループ・SNSなどの影響や、オリンピックでブレイキンが競技種目になったことでダンス人口が増え、ダンスの仕事も増えています。

とても嬉しいことですが、怪我をして踊れなくなったり、思うように動けなくてダンスを辞めてしまうことになる人は増えてほしくありません。

ダンスは本来、上手・下手関係なく、年齢や言語の壁を超えて、楽しむものです。

だからこそ、楽しく踊り続けられる身体をつくるために、たくさんの知識をつけて、実践して欲しいなと思います。

このサイトでは、健康に関することや、ダンスに繋がる話を載せています。

他の医療関係者や、トレーナーさんなどで、有益な情報を載せている方はたくさんいらっしゃいます。

そんな中で、ネット検索や、SNSで溢れる情報の取捨選択だけは、間違わないように気をつけてください。

これからのダンス・エンターテイメント業界へ

私の今までのスポーツ・ダンス経験や施術経験から、ダンス・エンターテイメント業界に、身体の知識・コンディションを整える習慣など、もっとたくさんの人に知っていただき、生活の中に取り入れていただきたいなと考えています。

また、舞台やイベントなどの現場に、トレーナーが入ることが当たり前になって欲しいなと思っています。

スポーツ界では、ほとんどの競技は、試合や練習にトレーナーが入ります。
選手の怪我の対応、コンディション管理などは、ダンス界にも必要な存在です。

ダンス経験者×治療家として、ダンス・エンターテイメント業界を支えていけたらと思っています。